ピアジェの発達段階ってなに?

発達心理学を勉強したい人には,このブログの内容は少し物足りないかもしれませんね。参考図書も紹介していこうと思います。一般の人が,発達心理学を少しずつ学んでいけるように,子育てや教育が少しでももっと楽しくなるように,子どもたちの感じている世界を少しでも一緒に味わえたらよいなと思っています。

 

今回は,「発達段階」について,有名な「ピアジェ」の発達段階説を説明します。ピアジェは,前回出てきましたね。「遺伝と環境の相互作用が大事である!」と言っていた人ですね。ピアジェの考えについて,少し補足をします。彼は,子どもは,積極的に世界に関わろうとしている「科学者」だと考えました。

 

例えば,(特に幼ない)子どもは,何回も同じことをすることがありますよね。ものを何回も落としたり,ティッシュやハンカチを何回も上に投げたり。大人には,無意味なことを繰り返しているように見えますが,これは,「○○をしたら,こうなるんだ!」という,実験を繰り返して,世界のルールを学習しているのです。なんと,子どもたちは,物理学者なのです。

 

さて,ピアジェの発達段階について説明します。彼は,子どもの認知(覚えたり,考えたりする能力)発達を4段階に分けました。①感覚運動期(0~2歳ごろ),②前操作期(2~7歳ごろ),③具体的操作期(7~11歳ごろ),④形式操作期(11, 12歳~)です。注意してほしいのは,ピアジェは,「ピアジェ語」をよく使います。例えば,「操作」とは,「頭の中で思い浮かべたものを変化させること」です。

 

まず,感覚運動期(乳児期)です。ピアジェは,この段階をさらに,6段階に分けていますが,ここでは,割愛します。感覚運動期では,身体的な活動を通して,世界を認識していきます。手で触ったり,口に入れたりして,体を使って考えています。まだ,ピアジェ語の「操作」はできません。また,この時期に,「対象(もの)の永続性」を獲得します。例えば,ダイエットするために,おまんじゅうをハンカチで隠しても,私たちは,おまんじゅうが消えることがないことを知っています。このように,ものを隠しても,ものは,そこに存在し続けることを,「対象の永続性」といいます。

 

次に,前操作期(幼児期)です。この時期の子どもは,象徴機能(ものを別のもので考えることができる能力)を獲得しています。例えば,本物の電話の代わりにバナナでまねをすることなどです。ん?もう,時代は,スマートフォンですよね。バナナ使うんでしょうか?気になりますね。ごっこ遊びやふり遊びができるようになります。また,この時期には,3つの特徴がよく言われます。①自己中心性(ピアジェ語),②中心化,③アニミズムです。

 

①自己中心性とは,「じこちゅー」でわがままであるというわけではなく,自分以外の視点を考えることが難しいという意味です。例えば,お父さんと子どもが,反対側からコップを見ているとすると,子ども側に取っ手が見えていても,お父さん側にも,自分と同じように取っ手が見えていると思ってしまうのです。

 

②中心化は,ある特徴に引っ張られて,別の特徴を考えられないことです。例えば,10個のおはじきを一列に並べるときに,ひとつひとつを離して置いたものと,間隔を短くしたものを2つ並べて,どちらのおはじきが多いですか?と聞かれたら,数は変わらないことを私たちは知っています。しかし,これが,この時期の子どもには難しいのです。見た目の長さに引っ張られてしまい,間隔が長い方が,おはじきが多いと答えてしまいます。

 

アニミズムとは,生き物だけでなく,ものにも命が宿っていると思うことです。もしかしたら,宗教に関しては,生まれ持ったものなのかもしれません。神様は,一人であるという,西洋は,一神教(神様は一人)文化であると言われますが,ギリシャ神話は多神教です。日本も多神教の宗教観を持っていますね。宗教の起源は,アニミズムなのかもしれません。すいません,脱線しました。

 

次に,具体的操作期(児童期,低・中学年)です。出ましたね,ピアジェ語「操作」。この時期は,子どもは,目の前にあるものならば,頭の中で,動かしたり,考えたりすることができるようになります。さらに,手や足を使うだけでなく,紙と鉛筆を使って,足し算・引き算などの計算ができるようになります。年齢に注目してください。7歳~ってことは,小学生になってからの時期です。しかし,この段階では,抽象的な物事(目の前にないもの)を考えることは難しいのです。9歳の壁(9歳前後で勉強につまづくこと)という現象もあります。学校の勉強についていけないことは,子どもの努力が足りないのではなく,まだ発達途中であるからなのです。これは,とても大切なことです。宿題をしない・勉強をしないのは,本当にわからないのかもしれないのです。

 

最後は,形式的操作期(児童期,高学年)です。また,ピアジェ語出ましたね。「形式的」とは,抽象的で,具体的でないもの(文字や概念など)です。例えば,中学校から,数式に「x」や「y」が入ってきますね,そして,「代入」するという,日常生活では,あまり使わないことを学習します。小学校高学年でも,「み・は・じ」あるいは,「き・は・じ」の関係を使って,道のり,速さ,時間の関係を学習します。このように,具体的から,抽象的の段階に発達しますし,ある程度は,学校のカリキュラムもそのようになっています。しかし,発達には,個人差がありますよね。中学校受験や小学校受験を考えてみてください。お分かりですね。

 

発達段階の考えは,非常にわかりやすいですが,こんなにきれいにわけられないだろうという批判もあります。また,ピアジェの理論は,間違っていることが多くの研究で言われています。せっかく勉強したのに,なんやねん!と,思うかもしれません。だいたいの考えは,合っているかもしれませんが,細かく考えると,所どころ,修正する必要があります。ピアジェ以降の発達心理学は,ピアジェの理論の批判・修正によって発展してきました。ピアジェは観察を中心に,研究をしました。そのため,おおまかな発達を知る上では,有用ですが,実験による研究では,もっと早い年齢で,できることがたくさんあることがわかっています。

 

参考図書

一般向け

渡辺弥生『まんがでわかる 発達心理学講談社

 

学習者向け

森口佑介『おさなごころを科学する』新曜社