エリクソンの発達段階説ってなに?前半

今回は,「エリクソン」の発達段階説を説明します。エリクソンの発達段階?って言われても,ピンとこない方が多いと思いますが,「アイデンティティー」という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。「わたしって,何者なんだろう?」ということに悩んだ経験があると思います。「わたしとは,○○である」という感覚のことを言います。野沢雅子さんと人造人間17号のものまねをしているコンビではありません。

 

ここで,少し子どもの段階の名称を紹介します。専門家が子どもの年齢を分けて言う場合には,生まれて1か月ごろまでを,「新生児」と言います。1歳~2,3歳ごろまでを,「乳児」と言います。3~6歳ごろまで,保育園児や幼稚園児を,「幼児」または,「未就学児」と言います。小学生を,「児童」と言います。中学生は,「青年(期前期)」,高校生を「青年(期後期)」と言います。大学生は,成人(期前期)だったのですが,青年(期後期)と言われることもあります。どんどん,青年期は延びているようです。

 

エリクソンは,人生を8つの発達段階に分類しました。①乳児期(0~1歳ごろ),②幼児前期(1~3歳ごろ),③幼児後期(3~5歳ごろ),④学童期(6~12歳ごろ),⑤青年期(13~20歳ごろ),⑥成人初期(20代前半~30代ごろ),⑦成人期(30~60代ごろ),⑧高齢期(60代ごろ~)です。のちに,⑨超高齢期も追加されました。エリクソンの理論では,その発達段階ごとに,心理社会的危機(乗り越えるべきもの)を設定しました。

 

①乳児期の危機・葛藤は,「基本的信頼と基本的不信」です。養育者への信頼を得るのと同時に,すべての要求に答えてくれるわけではないという不信を体験していきます。ここでは,課題や危機と言っていますが,基本的信頼と基本的不信の両方のバランスをとっていくことが,発達には重要とされています。どちらかが欠けてもいけないのです。例としては,泣いたらすぐに来てくれる(信頼)けど,トイレについていくことは,拒否される(不信)などがあります。基本的不信を克服することで,両行な,自分と他者との関係性を築いていきます。

 

②幼児前期の危機・葛藤は,「自立性と恥・疑惑」です。自分の力で,できることが増えて,成功すれば,褒められることも増えてきます。自立性とは,自分から,何かをすることができる能力です。しかし,活動する分,失敗も経験し,恥や自分への疑惑(できると思っていたけどできない?)を抱くようになります。恥や疑惑を克服することで,自立性を獲得していきます。

 

③幼児後期の危機・葛藤は,「自主性と罪悪感」です。好奇心を持ち,いろんなことにチャレンジするようになります(自主性)。その一方で,失敗をして,大人に怒られることも増えてきます(罪悪感)。罪悪感を克服することで,チャレンジし続けられる自主性を獲得します。

 

④学童期の危機・葛藤は,「勤勉性と劣等感」です。自分で勉強したり,努力したりすることで,目標を達成しようとする(勤勉性)時期です。と同時に,がんばってもうまくいかなかった経験(劣等感)をしていきます。劣等感を克服することで,勤勉性を維持することができます。

 

今回は,ここまでにします。少ない文字数でまとめるのは,難しいですね。エリクソンの理論では,各段階の課題を克服できない場合は,次の段階に進めないとされています。厳密にいうと,さらに細かい分類があるのですが。

 

甘えんぼになるから,赤ちゃんの時には,突き放すことが必要だという人がいますが,まったく逆の影響が出てしまう可能性があります。基本的不信を克服できない場合,それを大人になっても引きずってしまうということもあります。もちろん,その後の愛情で克服できるとも言われています。乳児期には(もちろん,それ以降も),たっぷりの信頼・愛情を注いでも良いのです。「あなたをなにがあっても愛している」という信頼は大切です。しかし,だからといって,忙しくて疲れている,お母さん・お父さんにとって,毎回100%の対応をすることは難しいでしょう。「ほどほど」で良いのです。できる限りの愛情で十分であることが,発達心理学では言われています。

 

自立性と恥・疑惑では,トイレトレーニングなどがあげられます。自分でトイレができるようになる過程では,おもらしをしてしまうこともあります。自分でやりたいという気持ちが強くなってくると,「いやいや期」,「第一次反抗期」,「魔の2歳」などがあります。しかし,これは,むしろ子どもの自己(わたしという感覚)が発達している証なのです。やると言って,泣き,できなくて,泣き,親御さんは大変ですが,子どもの成長を感じられる時期でもあります。

 

上記で書いてきた,「」の左側のもの(基本的信頼など)を獲得できるように,そして,右側のもの(基本的不信など)を克服できるように,親や先生などの大人は,サポートしていく必要がありますし,発達段階の理解は,サポートする際のヒントになります。失敗したとき,子どもはたちは,自分の失敗に気付いていることが多いです。恥ずかしいな,怒られるの嫌だなと,感じているのです。失敗は失敗として,認めることは重要でしょうが,それを乗り越えるまでがセットなのです。そこをサポートすることで,失敗にめげずに,チャレンジできるこころを作っていくことができます。