コールバーグの道徳性発達段階ってなに?

さて,今回も道徳性の発達についてです。前回は,赤ちゃんは,人を助けようとすること,他者を助けるものを好むことを書きました。そして,科学の再現性についても触れました。科学は真実を明らかにするためにあります。最近,フェイクニュースというものが注目されていますね。ツイッターやラインなどのSNSで流れている嘘のニュースのことです。メディア(テレビやインターネットのニュースなど)がいつも正しいことを言っているとは限りません。コロナの情報も,日本の政府発信のものと海外のものは異なっています。本当にそうなの?と疑いながらニュースを見た方が良いと思います。「研究で〇〇がわかった!」というニュースもちょっと怪しいことがあります。

 

本題に入ります。今回は,「コールバーグ」の「道徳性発達段階」について説明します。道徳性の発達と言われたら,ピアジェ(出ました!Dr. P.)とコールバーグは必ず出てきます。コールバーグは,子どもや青年に道徳的葛藤がある物語を聞かせて,どのように答えるかで発達段階を設定しました。道徳的葛藤がある物語の例として,「ハインツのジレンマ」が有名ですので,以下に書きます。ただし,その後,コールバーグは,段階6を取り下げました。

 

【物語】

ハインツの奥さんが病気で死にそうです。医者は,「ある薬を飲むほかに助かる道はない」と言いました。その薬は,最近ある研究所で発見されたもので,製造するのに5万円かかり,それを50万円で売っています。ハインツは,手元にお金がないので,お金を借りて回りました。しかし,半分の25万円しか集まりませんでした。ハインツは,研究所の所長さんに訳を話し,薬を安くしてくれないか,後払いにしてくれないかと頼みました。しかし,頼みはきいてもらえませんでした。ハインツは,困り果て,ある夜に,研究所に押し入り薬を盗みました。

 

【質問】

ハインツは盗むべきでしたか?なぜですか?など。。。

 

コールバーグは,「盗むべきかどうか」ではなくて,「なぜそう思うのか」の判断の理由を評価しました。それが以下の発達段階です。

 

①前慣習的水準(ルールに従う前)

段階1:罰と服従志向 <- 泥棒をすると怒られるから!

段階2:道徳主義的相対主義 <- ハインツがそうしたかったから!

②慣習的水準(ルールに従う)

段階3:対人的同調,良い子志向 <- みんな〇〇だっていうよ!

段階4:法と秩序の維持 <- 法律は守らないといけないよ!

③後慣習的水準(ルールがすべてではない)

段階5:社会契約的遵法 <- 法律を守ることは,世界の秩序を維持するためでもあるよ!

(段階6:普遍的な倫理的基準 <- 法律違反だろうと,ヒトは助け合う生き物である!)

 

日本の例だと,山岸 (1991)があります。ちなみに,論文から引用(文章などを借りること)する際には,名前 (発行年)という書き方をするルールがあります。これに関しては,段階5でしょうかね。心理学系の論文の書き方で世界で統一されているルールです。

山岸明子 (1991). 道徳的認知の発達 大西文行(編) 新児童心理学講座9 道徳性と規範意識の発達 金子書房 

 

10-11歳と13-14歳では,段階2と段階3の間が最も多く,16-17歳では,段階3が最も多く,18-26歳では,段階3と段階4の間と段階4が最も多いようです。現代の子どもや若者は変わってきているでしょうかね。そして,大人はどうでしょうか。道徳的判断は,文化や社会から影響されます。

 

コールバーグの道徳性発達は,「正義と権利の道徳性」しか扱っていない!いう批判があります。ハインツのジレンマでは,ハインツと薬屋の権利の葛藤に気づいていることが評価されました。しかし,薬屋がハインツの奥さんを助けようとしないことなどのケアや責任に関する「配慮の道徳性」が評価されていません。道徳性の発達には,この両者が必要です。

 

今回はここまでにします。

参考文献は,

長谷川真里『発達心理学 心の謎を探る旅』北樹出版

です。

 

発達心理学の入門書・教科書です。

長谷川先生は,道徳性心理学が専門なので,

道徳性の発達(特に青年期)の内容が濃いです。

 

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