道徳的感情ってなに?共感ってなに?

3月に入りましたね。2週に1記事というペースになってきました。このぐらいがちょうど良いのでしょうか。ブログに書いている内容と,普段勉強している内容と,研究している内容が,少しずつ違っていますので,頭の切り替えには良いのかなあと思います。

 

実は,私の家には,机と椅子がなかったのですが,ちょっとこの度,アマゾンで買ってみました!普段は,寝るときぐらいしか家にいないのですが,家で落ち着いて,勉強したり,本を読んだりしようと思います。本当は,よく引っ越しをするので,家具を買わないようにしていたのですが,生きている時間は有限なので,ほしいものは買おうと決めました。最近は,積極的に休むようにしようと思ってはいるものの,なんか家にいるときの「ぼけー」は,質が悪いというか,疲れるんですよね。引っ越すときのめんどうは,未来の自分に託します。うーん,でも近いうちにまた留学したいし,大学院修了したら,確実に今の場所を離れることになるので,めんどくさいなあ。ちなみに,今の場所は,もうすぐ一年になります。さらにちなみにもうすでに,少しでっかい懸垂用のぶら下がり器が部屋にありますが,こいつは,引っ越す際にお別れするでしょう。

 

さて,前置きがありましたが,今回は,道徳的感情について書きます。ルイスは,感情を「一次的感情」と「二次的感情」に分けて,発達的にどのように獲得していくかをまとめています。さて,映画『インサイド・ヘッド』をご覧になったことはあるでしょうか?以前,別の記事でも紹介しましたが,この映画には,神経科学者が関わっているので,科学的な知見にそってストーリーが進んでいきます。主人公ライリーの頭の中で,感情たちが生き生きとやり取りをしていますね。「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」でした。そして,「ビンボン」は,空想の友達として出てきましたね(復習です)。

https://www.learnerchilddevelopment.work/entry/2020/01/02/021337

 

「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」の5人(?)は,基本的な感情としてライリーが赤ちゃんの時からいましたね。これと同様に,ルイスによると,「一次的感情」として,「喜び」「驚き」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「恐れ」があり,これらは,生後半年までに現れるとされています。「驚き」「恐れ」は「ビビり」に,「嫌悪」は「ムカムカ」に対応しますでしょうか。

 

その後,ルールの理解し,自分の行動を評価できる(良いことをした,悪いことをした),見られている自己の発達などによって,1歳後半~2歳ごろに,「てれ」「羨望」「共感」など,2歳半~3歳ごろに,「当惑」「誇り」「恥」「罪悪感」が出現するとされています。「誇り」「恥」「罪悪感」の感情は,「自己評価的感情」とも呼ばれますし,「道徳的感情」です。

 

道徳的感情として,「恥」と「罪悪感」について考えてみましょう。

「恥」は,自分の身体的特徴や能力などを否定的に評価し,かつ他者が自己を否定的に評価していると考えるときに生じる感情です。例えば,転んでしまったときに,私は,「ドジで運動神経がないなあ」と評価して,それを誰かに見られたときに,「ドジで運動神経がないやつだな」と評価されていると考えるというものです。恥が生じた際は,他者を避ける行動をとりやすいとされています。

 

「罪悪感」は,自分の行為を否定的に評価し,その行為が他者にどのように影響するのかを考えるときに生じる感情です。例えば,上の転んだ例だと,転んだところを見せてしまって,「きっと困惑させてしまっただろうなあ」と考えるというものです。罪悪感は,他者への影響に関係するので,謝るなどの行動がとられます。

 

私は,目の前で人が転ぶんだとき,「助けた方が良いよなあ。でも,転んだところを見られて恥ずかしいかもなあ,放っておいてほしいかなあ,すぐにこの場を離れたいから,声かけられたくないかなあ。。。」と困惑します。もちろん,おもいっきり転んだらすぐに声を掛けますが,おっとっと程度だったら,悩みます。そして,そのあとに,どうしてすぐに助けなかったのかを思い,「罪悪感」を感じて反省しています。

 

最後に,獲得の順番は逆であるが,「共感」について考えましょう。「共感」は,道徳性・感情の基盤です。教育関係者の方とお話をすると,ほとんどの方は,「共感」は良いものであると思っています。しかし,少し注意が必要です(興味がある方は,ポール・ブルームの『反共感論ー社会はいかに判断を誤るか』を読んでください)。共感には,2つあります。「情動的共感」「認知的共感」です。

 

1つ目の「情動的共感」は,他者の感情を共有し,その人の行動状態に合わせることです。赤ちゃんでは,「情動伝染」が起きます。これは,他の赤ちゃんが泣いていると,一緒に泣いてしまう現象です。自他分離(自分と他の人の区別)の未熟な赤ちゃんは,悲しみ(?)が伝染してしまうのです。また,赤ちゃんもそうですが,他の動物にも見られます。一番基礎になる共感でしょう。

 

2つ目の「認知的共感」は,他者の感情について考え理解する能力です。これには,「視点取得(他者の視点に立てる)」や「心の理論(他者の考えていることを予測する)」ことも関係していますし,同義として使うこともあります。頭で考えて,「きっと,○○君は,こう感じているな」というものです。情動的共感から遅れて獲得します。

 

共感性尺度としては,デイヴィスの「対人的反応性指標」があります。尺度というのは,簡単に言うと質問事項やアンケートのようなものです。質問に回答してもらい,それぞれの得点を出して,その関係を考えます。デイヴィスの尺度では,①共感的関心,②視点取得,③個人的苦痛,④ファンタジー,4つの次元(質問のまとまり)があります。

 

①「共感的関心」は,他者への同情や思いやりの持ちやすさを測ります。

②「視点取得」は,他者の視点に立つようにしているかを測ります。

③「個人的苦痛」は,他者の苦しみに対して不快に感じやすいかを測ります。

④「ファンタジー」は,その世界に自分を当てはめる傾向を測ります。

 

「情動的共感」と「認知的共感」は,共感の分類や定義です。共感ってなに?ということです。それに対して,共感性尺度は,その人が,その集団が,どのくらいそれぞれの項目に当てはまるか?ということです。同じ「共感」の説明ですが,違う側面を表していることに注意です。

 

今回は,ここまでします。

 

参考文献・おすすめの本は,

『子どもは善悪をどのように理解するのか?』長谷川真里 ちとせプレス

『孤独と共感』日経サイエンス編集部 日経サイエンス

『反共感論』ポール・ブルーム 白揚社

『共感』 梅田聡(編) コミュニケーションの認知科学2 岩波書籍

です。読みやすさ順です。