空想の友だちってなに?

2020年になりましたね。今年もたくさん研究していこうと思います。今年の前半は,来年以降の研究生活に関わってくる大事な時期なので,気を抜けません。そして,後半は,修士論文の執筆がありますので,気を抜けません。研究がんばります。海外にも研究を発表しに行きたいと思います。ブログは,社会貢献の一環として続けていきます。

 

さて,今回は個人的には,発達心理学と言ったらこの現象でしょ!!っていうテーマについて書きたいと思います。「空想の友だち」です。聞いたことがある方もいると思います。時に,子どもは,大人(他者)には見えない友だちを持ち,話かけ,遊ぶことがあります。このように,子どもは,実際には存在しない友だちを持つことがあります。なじみのない方からしたら,おばけと話しているのかもしれなかったり,精神的におかしいのかもしれないと心配するかもしれません。しかし,精神疾患とは関係ないことが研究でわかっています。よく,赤ちゃんや幼児が,誰もいないかどをじっと見て,笑いかけているといううわさを聞いたことがありますが,もしかしたら,空想の友だちがいるのかもしれません。この現象は,世界中で見られます。

 

ちなみに,かなしばりや幽体離脱などの,霊的な不思議な体験は,脳と身体の関係のずれから生じるものだったりするので,実験で作り出すことができます。霊感なども,感覚の敏感性や予測システム,心の理論などの過剰活動が原因ではないかと考えられます。

 

そうとは言っても,空想の友だちをイメージするのは難しいと思います。身近な例で言ったら,「となりのトトロ」のトトロや,「インサイドヘッド」のビンボンがそうだと言われています。まさに,子どものときにだけ,あなたに訪れる不思議な出会いなわけです。ただ,すべての子どもが経験しているわけではなく,大人になっても空想の友だちがいるという人もいます。子どものときにいても,ビンボンのように忘れられているかもしれません。

 

そういえば,「インサイドヘッド」は,なかなか脳科学や心理学の知見と合っていると思います(特に基本感情や記憶メカニズムなど)。神経科学者も映画の製作に関与しているようです。あとは,国によって,ライリーの子どものときのスポーツや嫌いな食べ物が違うということも見どころですね。ちなみに「ズートピア」も国によって,出てくる動物が違ったりします。私は,ちょうど,フランスへ行く飛行機の中で,ズートピアを見たので,マイケル・狸山さんは出てきませんでした。そして,フランス語には,狸という単語もありません。狸は犬と一緒なんだそうです。ちなみに,日本に帰ってくるときは,「シング」を見てきました。

 

さて,話を戻します。空想の友だちには,2種類あると言われています。①「目に見えないタイプ」と②「もの(ぬいぐるみや人形など)タイプ」です。①のタイプは,トトロやビンボンなどのような,言葉通りの子どもが空想上で作り出している存在です。同世代として対等な関係などが多いと言われています。それに対して,②のタイプは,ぬいぐるみや人形が心や人格を持っているかのように振舞います。自分よりも年下で,お世話をするような関わりが多いようです。

 

②のタイプに関しては,「移行対象」という概念との線引きが難しいとされています。ここでは,細かくは言いません。移行対象とは,例えば,小さい子どもが,布やタオル,毛布などをずっと持ち歩いていて,それが,なくなると不安になってしまうようなものを言います。スヌーピーに出てくる,「ライナスの毛布」がその例です。②のタイプと移行対象の大きな違いは,対話をしたり人格を付与していることです。しかし,ここらへんは,最前線で研究してる専門家でもまだ議論が続いています。

 

研究自体が多くないので,強い結果が言えないところがありますが,精神疾患との関係はないことは,頑健なようです。そして,普通の子どもに起きている現象で,むしろ,コミュニケーション能力や以前書いた心の理論などの課題の成績が良いことも報告されています。これらは,社会的認知能力と言われ,空想の友だちがいる(いた)子どもは,人とうまくやっていけるのかもしれません(強くは言えない)。つまり,内気で友だちがいないから空想の世界に入ってしまう,コミュニケーションが苦手な子どもが空想の友だちを持っているというわけでもないようです。

 

統合失調症などとの違いとして,空想の友だちは,実際には現実に存在していないことを子どもはわかっていると言われています。そのため,発達心理学の教科書などでは,ふり遊びの一種であるとされています。つまり,現実にはいないとわかっていながら,リアルに見ていると言うことです。イメージとしては,ポケモンGO妖怪ウォッチみたいな感じでしょうか。子どものころに空想の友だちがいた方に話を聞いてみると,多くの方が,恥ずかしくて誰にも言えなかったと答えるようです。

 

空想の友だちは,2歳ごろから見られ,4歳でピークになり,9歳ごろには,ほとんどいなくなってしまうと言われています。また,文化差があり,欧米圏では,①の目に見えないタイプが多いのですが,日本や中国では,①は少なく,②のものタイプが多いということがわかっています。どうしてこうなるかは,よくわかっていませんが,宗教の違いや親との関わり方などが要因としてあると議論されています。

 

どうして子どもは,このような友だちを作りだすのでしょうか?病的ではないと言いつつ,持つ子と持たない子がいるのは不思議なことです。一人っ子や第一子(長男や長女)が持ちやすいと言われています。そのため,子どもの時期の寂しさを補うために空想の友だちを作り出すのではないかと言われています。あるいは,実際の友だちと関わる練習をしているのかもしれません。あるいは,すべての子どもが同じような体験をしているのかもしれません。

 

幼児期には,想像と現実の関係や境界が私たち大人よりも,より重なっているのかもしれません。つまり,想像と現実が混ざりやすいということです。「サンタクロース」や「なまはげ」など,私たちがフィクションだと思っていることでも(一応ですよ!本当にはいるかもしれない!),子どもたちは,本気で喜んだり,わくわくしたり,この世の終わりを悟るわけです。そして,これは私の研究にも関わってくるのですが,この年代の子どもたちは,勘違いなどではなく,本当に想像の世界を見ている,感じている可能性があることを示唆しています。

 

空想の友だちは,子どもが大人とは異なった世界を見て,感じている可能性があることを教えてくれます。実際にどうかは,まだわかっていないので,なんとも言えません。そして,それを私は研究していきたいと思っています。上記で書いたように,このような現象は,子どもの発達を考えた際に,修正するべきものではないです。私たちから見たら,気持ちが悪いかもしれませんが,見守ってあげることも大切です。

 

発達心理学を勉強している方には,

森口佑介 (2014). 空想の友達ー子どもの特徴と生成メカニズムー. 心理学評論, 57(4), 529-539.

が,読みやすくて勉強になります。論文を読んでみましょう。

 

おすすめの本は,

『おさなごころを科学する』森口佑介

『哲学する赤ちゃん』アリソン・ゴプニック

です。