ヴィゴツキーってだれ?発達の最近接領域ってなに?

おかげさまで,ブログを続けることができています。現在は,移動のバスの中(北海道からの帰路)で記事を書いていますが,研究者は,書かないといけない,論文や記事,本の原稿,発表の資料の準備のために,飛行機やバス,電車の移動時間に忙しくパソコンをカタカタしているようです。

 

さて,今回は,ピアジェに並んで,とても重要な,そして若くして亡くなった,旧ソ連発達心理学者「ヴィゴツキー」と彼の理論である,「発達の最近接領域」について説明します。日本国外に関わらず,ファンが多い研究者です。

 

ピアジェの理論では,子どもは,環境との相互作用で発達すると言いますが,他者や文化,社会については,特に重要視していませんでした。それに対して,ヴィゴツキーは,子どもが生活している社会や文化,他者の影響,その他者が生活している社会や文化の影響を強調しました。つまり,「他者,文化,社会」と「子ども」の関係が重要なのです。

 

「発達の最近接領域」とはなんでしょうか?学校のテストを思い出してください。テスト用紙に書かれている問題を,「一人」で「相談しない」で答えないといけませんね。このルールをやぶってしまうと,カンニングになってしまって,テストは0点になってしまい,かつ,ものすごく怒られます。このように,「現在の発達のレベル」は,日常的にわかりやすいと思います。しかし,現実の世界の問題は,一人で解決しないといけないものなんか,ほとんどありません。

 

現実の社会では,グループやチームを作って,プロジェクトを進めますね。「数人」で「相談しながら」問題を解決していきます。つまり,一人でできるレベルとは別に,誰かと一緒ならできるレベルがあると考えられます。このレベルは,「潜在的な発達のレベル」と呼ぶことができます。「発達の最近接領域」とは,「現在の発達レベル」と「潜在的な発達のレベル」の間の領域のことで,「のびしろ」のことを言います。サッカー選手の本田圭佑じゅんいちダビッドソンは,「発達の最近接領域ですね~」というと,サッカーファンには,伝わりにくいから,あえて,「のびしろですね~」と言っていたのだと思います。ヴィゴツキーの精神を引き継いでいますね。

 

ここで,何が大事かというと,他者の力を借りてできることは,後に自分だけでできるようになる可能性があるということです。また,教育とは,のびしろを広げること,そして,広がったのびしろを埋めることなのです。つまり,他者と一緒ならできることを広げ,その広がった部分を自力でできるようにサポートしていくことが大切です。

 

そして,教育とは文化的な営みです。その文化に適応する構成員を育むことが目的であります。その文化内で,子どもをサポートできるのは,子どもよりも能力のある(その文化により慣れている)構成員であり,その人たちが,先生です。同じレベルの友だちには,自分も含め,今のレベルに気づくことができないのです。ただ,クラスのグループでアクティブラーニングをしていれば良いわけではなく,適切に先生がサポートをして,質を広げる必要があるのです。

 

そして,もう一つ。子どもの発達・学習の評価は,現在のレベルを見るテストだけでは,測れないということです。その社会・文化の先輩である大人が,子どもたちののびしろを意識しながら,評価・サポートすることが大切なのです。

 

最近,ツイッターの記事で,「赤ちゃんは言葉がわかっていないんだから,話しかけても意味がないでしょ。」というものを見ました。衝撃的で泣けてきます。まったく,まったく,まったく,違いますよ!話しかけ続けるからこそ,言語を獲得していくんです。このブログを読んでくれている方には,しっかりと伝わっていると思います。赤ちゃんが反応しないからと言って,コミュニケーションに意味がないことなんかないです。

 

ヴィゴツキーの「文化・社会的アプローチ」は,多くの分野に影響を与えています。また,すこしづつ,紹介できたらと思います。

 

基本的には,

森口佑介『おさなごころを科学する』新曜社

渡辺弥生『まんがでわかる発達心理学講談社

を参考にブログを書いています。適宜,ほかの入門書や専門書も見ています。

ただし,わたしの理解のもと,書いていますので,まったく同じことは書いていません。

 

上記2冊は,非常に読みやすいです。

発達心理学を専門に学びたい方は,森口先生の本は,必須です。

渡辺先生の本は,マンガで書かれているので,とてもわかりやすいです。

2人の先生とも,非常に信頼できる先生方ですので,内容もしっかりしています。

ぜひ,読んでみてください。