大学生の時にどんな本を読んだの?④

さて,今回の10冊です。フランスから日本に戻ってきてからは,子どもの道徳性の発達を調べていたので,それに関連した本を読んでいました。さらに,療育施設で働いていたので,発達障害に関しても勉強していました。子どもに関しての本を読むことが多くなったり,大学院入試のための勉強を始めたころですかね。

 

日本に戻ってきてからの本です。

 

『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』モンズースー

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『子どもの釈迦的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり』林創

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『最新図解自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本』榊原洋一

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『なぜと問うのはなぜだろう』吉田夏彦

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ダンゴムシに心はあるのか新しい心の科学』森山徹

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『子どものうそ,大人の皮肉―ことばのオモテとウラがわかるには』松井智子

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『ジャスト・ベイビー:赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』ポール・ブルーム

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『子どもはなぜ嘘をつくのか』ポール・エクマン

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『哲学入門』戸田山和久

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『子どもは善悪をどのように理解するのか:道徳性発達の探求』長谷川真里

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今回の10冊は以上です。ペース配分を考えていなかったので,次の10冊で収まらないかもしれませんね汗

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?⑤

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大学生の時にどんな本を読んだの?③

いっきに書いちゃおうと思います。フランス留学中に,読書をする習慣が身についたように思います。交換留学で,リヨン第三大学哲学部に1年在籍しました。「自由」と「意識」をフランスで考えたいと思ったからです。特に,サルトルフーコーにはまっていました。しかし,フランス語で授業や本を理解するのが難しかったので,日本語で手に入るものをできる限り集めました。そんなとき,海外にいながら日本語の本を読むことができる電子書籍キンドルがとても便利でした。さて,今回の10冊です。

 

フランス留学中に読んだ本です。

 

『そうだったのか現代思想ニーチェからフーコーまで』小阪修平

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『予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』アリエリー

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『入門!論理学』野矢茂樹

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『ご冗談でしょう,ファインマンさん上下』リチャードファインマン

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『人生論ノート』三木清

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『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ』下条信輔

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『平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学』スコットペック

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『DNAから見た日本人』斎藤成也

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『あなたの知らない脳―意識は傍観者である』デイヴィット イーグルマン

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『つながる脳科学「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』

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そういえば,「日本人」のルーツは?という質問をドイツ人からされたんでした。あれは,友だちの部屋でパーティーをしている時だったっけな。

 

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?④

learnerchilddevelopment.hatenablog.com

 

大学生の時にどんな本を読んだの?②

さて,10冊ごとにわけて紹介しようと思います。今の私は,出会ってきた人々から影響されたというよりも,読んできた本に影響されています。専門的過ぎる本や,シリーズ本は,抜いています。

本を選んでいて思うのですが,なんか読んでいた時の思い出がよみがえりますね。ああ,これは図書館で読んだなとか,大学の池の横で読んだなとか,カメリアのベンチで読んだなとか。ワクワクだったり,孤独を感じていたり。ああ,自分はなんて無意味な人間なんだろう。少しでも前に進まないと。

 

大学時代に読んだ本です。

 

『脳の中の天使』ラマチャンドラン

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『人間らしさとはなにか?—人間のユニークさを明かす科学の最前線』ガザニガ

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『ファスト&スロー上下』カーネマン

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『データを正しく見るための数学的思考』ジョーダン・エレンバーグ

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『錯覚の科学』チャブリズ・シモンズ

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『他者とかかわる心の発達心理学:子どもの社会性はどのように育つか』清水・林(編)

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『学びとは何かー〈探求人〉になるために』今井むつみ

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フランス留学中に読んだ本です。

 

『フランス現代思想史ー構造主義からデリダ以降へ』岡本裕一郎

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『いま世界の哲学者が考えていること』岡本裕一郎

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存在と無サルトル

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今回の10冊は,少しマニアックかもしれませんが,興味のある人にはおすすめです。

フランス留学中には,キンドルを使って本を読んでいました。

がんばって,フランス語で「存在と無」を読む!と意地になっていたのを思い出しました。自由ってなんだろう。意識ってなんだろう。そんなことを考えながら,大学の図書館や,町の図書館,公園のベンチ,ガロア遺跡で。

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?③

learnerchilddevelopment.hatenablog.com

 

大学生の時にどんな本を読んだの?①

ことごとくイベントが中止になっていますね。私も研究会や学会などが中止に,発表の予定もなくなりました。今後,国内での研究イベントがなくなるのは,しょうがないですが,海外での研究イベントがなくなると,業績を考えると苦しいですね。6月にイスラエルで開催される学会で発表予定ですが,どうなることやらです。

 

今回は,大学時代に読んでおもしろかった本を紹介しようと思います。少ないですが,200冊ほど本を読むことができたので,そのなかから50冊ほど選びます。今年読んだ本からも出しますね。1年浪人して,1年留年したので,6年でこれしか読めなかったのか!と怒られそうですが,私なりに学問をしようと思い立ってからがんばって本を読む習慣を作りました。最近はあまり本を読めていないので,本を読む時間を作ろうと思います。読書メーターというアプリで読んだ本を管理しています。一般向けの本を選んでいます。

 

浪人時代に読んだ本です。

私は,実は「道しるばー」でした。

わかる人にはわかるでしょうか?

 

『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』ジャレド・ダイアモンド

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『知の逆転』ジャレド・ダイアモンド

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『東大入試問題に隠されたメッセージを読み解く』大島保彦

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大学で読んだ本です。

 

『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗り越えるための発達心理学』渡辺弥生

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『天才が語るサヴァンアスペルガー共感覚の世界』ダニエル・タメット

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アルジャーノンに花束を』ダニエルキイス

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数学ガール/ゲーデル不完全性定理結城浩

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『人はなぜ恋に落ちるのか?—恋と愛情と性欲の脳科学』ヘレンフィッシャー

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『飛びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』東田直樹

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『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』前野隆司

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とりあえず,10冊です。本屋さんや図書館を歩いている感じで見てください。

何か目に留まる本があるとうれしいです。

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?②

learnerchilddevelopment.hatenablog.com

 

道徳的感情ってなに?共感ってなに?

3月に入りましたね。2週に1記事というペースになってきました。このぐらいがちょうど良いのでしょうか。ブログに書いている内容と,普段勉強している内容と,研究している内容が,少しずつ違っていますので,頭の切り替えには良いのかなあと思います。

 

実は,私の家には,机と椅子がなかったのですが,ちょっとこの度,アマゾンで買ってみました!普段は,寝るときぐらいしか家にいないのですが,家で落ち着いて,勉強したり,本を読んだりしようと思います。本当は,よく引っ越しをするので,家具を買わないようにしていたのですが,生きている時間は有限なので,ほしいものは買おうと決めました。最近は,積極的に休むようにしようと思ってはいるものの,なんか家にいるときの「ぼけー」は,質が悪いというか,疲れるんですよね。引っ越すときのめんどうは,未来の自分に託します。うーん,でも近いうちにまた留学したいし,大学院修了したら,確実に今の場所を離れることになるので,めんどくさいなあ。ちなみに,今の場所は,もうすぐ一年になります。さらにちなみにもうすでに,少しでっかい懸垂用のぶら下がり器が部屋にありますが,こいつは,引っ越す際にお別れするでしょう。

 

さて,前置きがありましたが,今回は,道徳的感情について書きます。ルイスは,感情を「一次的感情」と「二次的感情」に分けて,発達的にどのように獲得していくかをまとめています。さて,映画『インサイド・ヘッド』をご覧になったことはあるでしょうか?以前,別の記事でも紹介しましたが,この映画には,神経科学者が関わっているので,科学的な知見にそってストーリーが進んでいきます。主人公ライリーの頭の中で,感情たちが生き生きとやり取りをしていますね。「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」でした。そして,「ビンボン」は,空想の友達として出てきましたね(復習です)。

https://www.learnerchilddevelopment.work/entry/2020/01/02/021337

 

「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」の5人(?)は,基本的な感情としてライリーが赤ちゃんの時からいましたね。これと同様に,ルイスによると,「一次的感情」として,「喜び」「驚き」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「恐れ」があり,これらは,生後半年までに現れるとされています。「驚き」「恐れ」は「ビビり」に,「嫌悪」は「ムカムカ」に対応しますでしょうか。

 

その後,ルールの理解し,自分の行動を評価できる(良いことをした,悪いことをした),見られている自己の発達などによって,1歳後半~2歳ごろに,「てれ」「羨望」「共感」など,2歳半~3歳ごろに,「当惑」「誇り」「恥」「罪悪感」が出現するとされています。「誇り」「恥」「罪悪感」の感情は,「自己評価的感情」とも呼ばれますし,「道徳的感情」です。

 

道徳的感情として,「恥」と「罪悪感」について考えてみましょう。

「恥」は,自分の身体的特徴や能力などを否定的に評価し,かつ他者が自己を否定的に評価していると考えるときに生じる感情です。例えば,転んでしまったときに,私は,「ドジで運動神経がないなあ」と評価して,それを誰かに見られたときに,「ドジで運動神経がないやつだな」と評価されていると考えるというものです。恥が生じた際は,他者を避ける行動をとりやすいとされています。

 

「罪悪感」は,自分の行為を否定的に評価し,その行為が他者にどのように影響するのかを考えるときに生じる感情です。例えば,上の転んだ例だと,転んだところを見せてしまって,「きっと困惑させてしまっただろうなあ」と考えるというものです。罪悪感は,他者への影響に関係するので,謝るなどの行動がとられます。

 

私は,目の前で人が転ぶんだとき,「助けた方が良いよなあ。でも,転んだところを見られて恥ずかしいかもなあ,放っておいてほしいかなあ,すぐにこの場を離れたいから,声かけられたくないかなあ。。。」と困惑します。もちろん,おもいっきり転んだらすぐに声を掛けますが,おっとっと程度だったら,悩みます。そして,そのあとに,どうしてすぐに助けなかったのかを思い,「罪悪感」を感じて反省しています。

 

最後に,獲得の順番は逆であるが,「共感」について考えましょう。「共感」は,道徳性・感情の基盤です。教育関係者の方とお話をすると,ほとんどの方は,「共感」は良いものであると思っています。しかし,少し注意が必要です(興味がある方は,ポール・ブルームの『反共感論ー社会はいかに判断を誤るか』を読んでください)。共感には,2つあります。「情動的共感」「認知的共感」です。

 

1つ目の「情動的共感」は,他者の感情を共有し,その人の行動状態に合わせることです。赤ちゃんでは,「情動伝染」が起きます。これは,他の赤ちゃんが泣いていると,一緒に泣いてしまう現象です。自他分離(自分と他の人の区別)の未熟な赤ちゃんは,悲しみ(?)が伝染してしまうのです。また,赤ちゃんもそうですが,他の動物にも見られます。一番基礎になる共感でしょう。

 

2つ目の「認知的共感」は,他者の感情について考え理解する能力です。これには,「視点取得(他者の視点に立てる)」や「心の理論(他者の考えていることを予測する)」ことも関係していますし,同義として使うこともあります。頭で考えて,「きっと,○○君は,こう感じているな」というものです。情動的共感から遅れて獲得します。

 

共感性尺度としては,デイヴィスの「対人的反応性指標」があります。尺度というのは,簡単に言うと質問事項やアンケートのようなものです。質問に回答してもらい,それぞれの得点を出して,その関係を考えます。デイヴィスの尺度では,①共感的関心,②視点取得,③個人的苦痛,④ファンタジー,4つの次元(質問のまとまり)があります。

 

①「共感的関心」は,他者への同情や思いやりの持ちやすさを測ります。

②「視点取得」は,他者の視点に立つようにしているかを測ります。

③「個人的苦痛」は,他者の苦しみに対して不快に感じやすいかを測ります。

④「ファンタジー」は,その世界に自分を当てはめる傾向を測ります。

 

「情動的共感」と「認知的共感」は,共感の分類や定義です。共感ってなに?ということです。それに対して,共感性尺度は,その人が,その集団が,どのくらいそれぞれの項目に当てはまるか?ということです。同じ「共感」の説明ですが,違う側面を表していることに注意です。

 

今回は,ここまでします。

 

参考文献・おすすめの本は,

『子どもは善悪をどのように理解するのか?』長谷川真里 ちとせプレス

『孤独と共感』日経サイエンス編集部 日経サイエンス

『反共感論』ポール・ブルーム 白揚社

『共感』 梅田聡(編) コミュニケーションの認知科学2 岩波書籍

です。読みやすさ順です。 

 

 

 

コールバーグの道徳性発達段階ってなに?

さて,今回も道徳性の発達についてです。前回は,赤ちゃんは,人を助けようとすること,他者を助けるものを好むことを書きました。そして,科学の再現性についても触れました。科学は真実を明らかにするためにあります。最近,フェイクニュースというものが注目されていますね。ツイッターやラインなどのSNSで流れている嘘のニュースのことです。メディア(テレビやインターネットのニュースなど)がいつも正しいことを言っているとは限りません。コロナの情報も,日本の政府発信のものと海外のものは異なっています。本当にそうなの?と疑いながらニュースを見た方が良いと思います。「研究で〇〇がわかった!」というニュースもちょっと怪しいことがあります。

 

本題に入ります。今回は,「コールバーグ」の「道徳性発達段階」について説明します。道徳性の発達と言われたら,ピアジェ(出ました!Dr. P.)とコールバーグは必ず出てきます。コールバーグは,子どもや青年に道徳的葛藤がある物語を聞かせて,どのように答えるかで発達段階を設定しました。道徳的葛藤がある物語の例として,「ハインツのジレンマ」が有名ですので,以下に書きます。ただし,その後,コールバーグは,段階6を取り下げました。

 

【物語】

ハインツの奥さんが病気で死にそうです。医者は,「ある薬を飲むほかに助かる道はない」と言いました。その薬は,最近ある研究所で発見されたもので,製造するのに5万円かかり,それを50万円で売っています。ハインツは,手元にお金がないので,お金を借りて回りました。しかし,半分の25万円しか集まりませんでした。ハインツは,研究所の所長さんに訳を話し,薬を安くしてくれないか,後払いにしてくれないかと頼みました。しかし,頼みはきいてもらえませんでした。ハインツは,困り果て,ある夜に,研究所に押し入り薬を盗みました。

 

【質問】

ハインツは盗むべきでしたか?なぜですか?など。。。

 

コールバーグは,「盗むべきかどうか」ではなくて,「なぜそう思うのか」の判断の理由を評価しました。それが以下の発達段階です。

 

①前慣習的水準(ルールに従う前)

段階1:罰と服従志向 <- 泥棒をすると怒られるから!

段階2:道徳主義的相対主義 <- ハインツがそうしたかったから!

②慣習的水準(ルールに従う)

段階3:対人的同調,良い子志向 <- みんな〇〇だっていうよ!

段階4:法と秩序の維持 <- 法律は守らないといけないよ!

③後慣習的水準(ルールがすべてではない)

段階5:社会契約的遵法 <- 法律を守ることは,世界の秩序を維持するためでもあるよ!

(段階6:普遍的な倫理的基準 <- 法律違反だろうと,ヒトは助け合う生き物である!)

 

日本の例だと,山岸 (1991)があります。ちなみに,論文から引用(文章などを借りること)する際には,名前 (発行年)という書き方をするルールがあります。これに関しては,段階5でしょうかね。心理学系の論文の書き方で世界で統一されているルールです。

山岸明子 (1991). 道徳的認知の発達 大西文行(編) 新児童心理学講座9 道徳性と規範意識の発達 金子書房 

 

10-11歳と13-14歳では,段階2と段階3の間が最も多く,16-17歳では,段階3が最も多く,18-26歳では,段階3と段階4の間と段階4が最も多いようです。現代の子どもや若者は変わってきているでしょうかね。そして,大人はどうでしょうか。道徳的判断は,文化や社会から影響されます。

 

コールバーグの道徳性発達は,「正義と権利の道徳性」しか扱っていない!いう批判があります。ハインツのジレンマでは,ハインツと薬屋の権利の葛藤に気づいていることが評価されました。しかし,薬屋がハインツの奥さんを助けようとしないことなどのケアや責任に関する「配慮の道徳性」が評価されていません。道徳性の発達には,この両者が必要です。

 

今回はここまでにします。

参考文献は,

長谷川真里『発達心理学 心の謎を探る旅』北樹出版

です。

 

発達心理学の入門書・教科書です。

長谷川先生は,道徳性心理学が専門なので,

道徳性の発達(特に青年期)の内容が濃いです。

 

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大学院ってなにをするところなの?研究ってなにをしているの?

2月になりましたね。1月は,あっという間に過ぎてしまいました。このブログは,発達科学の知見を知ってもらうことだけでなく,研究者,特に大学院生の生活を知ってもらうことも目的にしています。基本的には,大学院生は,大学院の研究室に所属して,研究指導者の指導を受けながら研究をしています。ただし,分野や指導研究者によってやり方は異なります。ちなみに,大学では,〇〇学部と言いますが,大学院では,〇〇学研究科などと言います。自己紹介するときは,「◇◇大学大学院〇〇学研究科M(修士)1の(名前)です。」とよく言います。修士課程のことをM(マスター),博士課程のことをD(ドクター)と言います。

 

大学院生がやっている「研究」ってなんでしょうか。大学を卒業したことがある方は,卒業論文を書いたと思います。卒業論文とは,大学の卒業のために書く研究論文のことで,ほとんどの大学では,この論文が審査されて,合格にならないと卒業できません。だいたいは,大学3年の9月ごろから研究を始めて,大学4年の1月ごろに提出します。そのため,多くの大学4年生は,就活をしながら,卒業論文を書いています。おそらく,卒業研究は,「学術的な方法で,研究をやってみて,論文を書いてみる」が最低目標です。「やってみる」で良いのです(最低限ですし,あくまで一般的にです)。

 

修士課程以上の大学院での研究は,「研究者として,学術的な方法で,研究できて,論文を書ける」が目的です。「やってみる」だけではだめで,「正しい方法でできる」ようになるために,プロの研究者(指導研究者,指導教員)から直接指導を受けるのです。ですので,研究指導は,師匠と弟子関係のような感じです。修士課程2年以上,博士課程3年以上かけて,研究指導を受けます。修士課程では,2年目に修士論文を提出し,博士課程では,博士論文を提出します。前になるほどおもしろいなあと思った例がありました。野球に例えて,卒業論文は,「バッターボックスに立つ」,修士論文は,「バットを振る」,博士論文は,「ヒットで塁に出る」ことが必要であると書いてありました。私はまだ,卒業論文しか書いたことがありませんが,自分で確認してみようと思います。

 

さて,脱線してしまいました。研究とは,「〇〇ってなぜ起こるのだろう?」とか,「△△ってどうなってるんだろう?」という,疑問(これを,リサーチ・クエスチョンと言います)を,科学的な方法で解明することです。しかし,このような大きな疑問を解明できたら,苦労しないです。「戦争はなぜ起きるのだろうか?」が解明できて,解決策がわかれば,もっと世界は平和になっています。「子どもが良い子に育つにはどうすれば良いか?」が解明できていれば,こんなにたくさんの育児本は出ていません。そして,「良い子」ってどう意味ですか?何歳の子どものことですか?どこの文化や国の子どものことですか?研究は,そんなに簡単なものではありません。

 

勉強するだけなら,上でも良いのですが,研究するためには,研究の内容を狭めていかなくてはいけません。教科書を読むだけではなく,自分で実際にやるのですから,一度にたくさんのことはできません。教科書の一文や一章は,たくさんの研究と研究者の努力によってできています。上の例だと,「良い子」は難しいですね。ただ,例えば,「ルールを守れる」,「他者の考えていることを推測できる」,「他者に共感できる」,「前の3つをもとに,他者が望む行動ができる」などに読み替えることができそうです。そうなると,「ルール理解」や「心の理論」,「共感」,「向社会的行動」などがキーワードになってきます。やっと具体的に何かができる段階になります。自分の経験から自分の考えを言い合うだけなら,誰だってできます。これは,科学ではありません。

 

次に,これらのキーワードに関する研究について調べます。もしかしたら,あなたの疑問は,もう解決されている可能性もあります。いろいろ調べてみて,自分の疑問が解決しないのであれば,自分でやるしかありません。「よし!やったるで!」となります。では,なぜその疑問は解決しないのでしょうか?他の研究では,何が足りないのでしょうか?いきなり新しい方法でやるのは,うまく行かない可能性が大きいです。まずは,今までにやられてきた方法をベースにして,少し改良したり,工夫したりすることから始めるのが良いでしょう。

 

このようにたくさん,関係する研究を調べていると,良い子っていうのは,〇〇な子であるとすると,良い子になるためには,△△が必要である。しかし,これは,文化によって異なるかもしれなくて,日本では,△△が必要だけど,アメリカでは,△△は必要ない。という,予想ができるようになります。これが,「仮説」です。そして,この仮説を調査や実験によって確認してみるのです。

 

最初に疑問に思ったことから,実際に研究することは少し変わってしまうかもしれません。それは,研究には限界があるからです。人間の理解のためには,全人類を調べれば良いでしょうが,そんなことはできませんよね。一度の研究の中に,盛沢山のことを入れてしまうと,何を調べたのかがわからなくなります。時間の制限もあります(研究だけしているわけではありませんし)。一つの疑問に対して,いろいろな研究(実験や調査)をするというのが,研究者や大学院生がやっていることです。しかし,最初の疑問はとても重要なものです。私も,「生きるとはどういうことか?」「人間とは何か?」が軸にあります。

 

私の修士1年目の今は,上で書いた,1つの研究の疑問やテーマを決めて,キーワードを調べて,仮説を立てるところまで来ました。「キーワードを調べて仮説を立てる」がとても時間がかかりました。そして,どんどん新しい研究が出てくるので,終わりがありません。今は,その計画で実験をしても良いかの許可をもらう段階です。これは,倫理審査といって,ヒトに関わる研究は,その研究の意義(やるメリットがあるか)と研究の方法(実験方法,実験前後の対応など)は適切で,実験参加者に害はないかをチェックされて,許可をもらわないといけないルールがあります。ここで,許可されれば,実験をスタートすることができます。これらのプロセスが,「研究者として学術的な方法で」のトレーニングです。これを繰り返していくのでしょう。

 

今回は,ここまでにします。私の経験から書いたものですので,科学的な文章ではないですし,違う意見の方々もいると思います。ただ,大学院生は社会に出ようとせず,大学の延長で,遊んでいるわけではないことを知ってほしいです。研究以外にも,たくさん仕事があります。しばしば,遊んでいるように思われていて,攻撃されます。これは,大学院生は全人口に対して少数ですから,何をしているかがよくわからないからであると思います。同年代に比べると,異なった生活をしていますが,一生懸命生きています。それを知ってもらうことも大切な仕事だと思っています。

 

 

赤ちゃんって善悪判断できるの?他者を助けようとするの?

私は,発達科学・発達心理学を専門としていると言いましたが,具体的には,子どもの「心」と「行動」と「脳」の関係を研究しています。そして,それぞれの発達とその関係の発達を研究しています。さらに,これらを「意識」という現象・機能で説明しようとしています。まだまだ,研究途中ですので,詳しくは書きません。

 

このブログのタイトルは,「子どもが意識している世界」です。なぜわざわざ,このように言うかというと,子どもと大人では,感じている世界も考えていることも異なっているからです。どっちが本物でしょうか?子どもはいつか必ず,大人になる。社会は大人が回している。子どもは未熟な存在だ。だから,大人の世界と考えが本物だ!本当にそうでしょうか?私はブログを通して,この疑問をみなさんと考えたいと思っています。

 

そして,もう一つ。大人はみんな同じ世界と考えを持っていますか?20代と50代の生き方は同じですか?大人と子どもで分けてしまいがちですが,大人になっても発達し続けます。これが,「生涯発達心理学」です。もちろん,個人個人でも違いますよね。

 

子どもは,大人になる準備状態なだけではありません。進化を考えると,遺伝子を伝えることが第一目標になります。生殖ができる大人になるまで生き残らないといけませんね。子どもは,子ども期を生き残るためにも進化をしてきました。こういう考え方を「進化発達心理学」と言います。神経系(脳など)との関係を考えるのが,「神経発達心理学」です。〇〇学->△△心理学->◇◇発達心理学ってどんどん名前が長くなっていきますね。臨床と発達を組み合わせた「臨床発達心理学」もあります。生涯進化神経臨床発達心理学にもなるかもしれませんね。

 

余談はここまでにして,今回は,「道徳性の発達」について書きます。私は,大学の学部時代は,子どもの道徳性の発達を勉強していました。卒業論文は,道徳性の中でも,子どものうそを研究しました。余談が長すぎたので,途中でやめるかもしれません。まずは,子どもの「善悪判断」について考えましょう。善悪判断とは,良いと思うか悪いと思うかどっちやねん?ということです。さて,ピア・・・。と言えば,そう!ピアジェ先生ですね。子どもの道徳性研究もピアジェから始まっています。

 

次の2つの子どものどちらが,より悪いと思いますか(怒りますか)?①「お手伝いをしていて,テーブルにぶつかって,ガラスのコップを7個落として割ってしまった子ども」,②「ご飯の時にふざけていてテーブルにぶつかって,ガラスのコップを2つ落として割ってしまった子ども」きっと,「わざと」かどうか,これを「意図」といいますが,で判断するのではないでしょうか?つまり,②の方が悪い。ところがどっこい,6歳以前の子どもは,①の方が悪いと答えるのです。ピアジェは,このことから,この年齢の子どもは,意図ではなく,結果で善悪を判断すると考えました。ピアジェ先生,そんな単純じゃないでしょ!と突っ込める方は,ちゃんと私のブログを読んでくれているか,よく勉強されている方でしょうか。子どもを叱るときは,この点を考慮してあげてください。「わざとでしょ!」と責められても,理解していないかもしれませんから。

 

赤ちゃんは,良いやつと悪いやつを区別できて,良いやつを好むという研究が,ハムリンという研究者から出ました。これはとてもインパクトがありましたね。哲学的にも,「性善説(人は生まれながらに善人である)」と「性悪説(人は生まれながらに悪人である)」の議論に対して,性善説を支持するような研究です。本当は,生まれながらにってどういうこと?具体的にいつ?赤ちゃんは社会的な生き物ですから,生まれてから環境の影響を受けています。ここら辺は,ややこしいので今は置いておきます。

 

この研究には,顔の書いてある〇と△と□と坂道が出てきます。①坂を上っている〇を□がいじわるをしてじゃまする,②坂を上っている〇を△が親切に後ろから押して手伝う,という二つの場面を6か月児に見てもらいます。その後,△と□を見せて,どっちに手を伸ばすかを調べました。その結果,6か月児は手伝っていた△を選んだというのです。

Hamlin, J. K.,  Wynn, K., & Bloom, P. (2007). Social evaluation by preverbal infants. Nature, 450, 557-559.

 

さらに,ハムリンらの他の研究では,早くて3か月ごろから,①じゃま,②手伝う,③何もしない,を組み合わせたときに,①じゃまと②手伝うでは②手伝うを好み,②手伝うと③何もしないは変わらない,①じゃまと③何もしないは③を好む,ことが報告されており,良いやつが好きだというより,悪いやつに敏感なのかもしれません。これらから,1歳にならない赤ちゃんでも,良いことと悪いことを区別できて,その行いした人・ものに反応できることがわかっています。

Hamlin, J. K., Wynn, K., & Bloom, P. (2010). Three-month-olds show a negativity bias in their social evaluations. Developmental Science, 13, 923-929.

 

ハムリンらの研究は,赤ちゃんの善悪の認識についてでした。次に,トマセロらの赤ちゃんが行う助ける行動(援助行動)についての研究を紹介します。トマセロは,赤ちゃんの向社会的行動(他者のためになる行動です)の研究に関して,怪物って感じです(私のイメージです)。赤ちゃんの前で,物を落としてしまったけど,手がふさがっていて取れないときに,赤ちゃんは取ってくれるでしょうか?という研究です。この研究から,14か月と18か月の赤ちゃんは,すぐに拾ってくれました。さらに,12か月児では,気づいている人よりも,気づいていない人に,多く指差しで知らせることがわかっています。これらのことから,赤ちゃんのころから,人を助けたいと思って行動できることがわかっています。

Liszkowski, U., Carpenter, M., & Tomasello, M. (2008). Twelve-month-olds communicate helpfully and appropriately for knowledgeable and ignorant partbers. Cognition, 108, 732-739.

Warneken, F., Hare, B., Melis, A. P.,  Hanus, D., & Tomaswllo. M. (2007). Spontaneous altruism by chimpanzees and young children. PLoS Biology, 5, 1414-1420.

Warneken, F., & Tomaswllo. M. (2006). Altruistic helping in human infants and young chimpanzees, Science, 311, 1301-1303.

 

今回はここまでにします。赤ちゃんの研究は,哲学的な問いを考える上でも,重要であり,注目されています。ただ,研究をする上では,「ヒトは生まれながらに善である」と思いたいという,私たちの願望が入ってきてしまわないようにしないといけません。また,赤ちゃん研究の再現性の問題もあります。これは,「赤ちゃんは,〇〇歳から△△がわかる」という研究が,同じようにやってみたら,同じ結果にならなかったら,え?どういうこと?ってなりますよね。科学は,再現できなくてはいけません。「赤ちゃんは,こんなに早くから〇〇できるんやで!」の早さをめぐる争いが多かった印象があります。確かにびっくりだし,おもしろいのですが,私は,どのように発達していくか,なぜそのように発達するのかを考える研究がしたいと思っています。

 

おすすめの本は,

『子どもの社会的な心の発達』林創 金子書房

『子どもは善悪をどのように理解するのか?』長谷川真里 ちとせプレス

です。一般向けに書かれており,とても読みやすいです。

学部と卒論で,大変お世話になった先生方です。

 

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大学院って何年あるの?お金もらえるの?

大学院って何年あるの?

とよく聞かれます。多くの大学の学部は4年ですね。医学部や薬学部は6年でしょうか。大学院は2つの段階にわかれています。大学を卒業後に入るのが,大学院の「修士課程」あるいは,「博士課程前期」で最低2年在籍します。その後,大学院の「博士課程」あるいは,「博士課程後期」で最低3年在籍します。そのため,大学院修了して研究者などの専門家になるためには,最低5年は大学院に在籍することになります。

ほとんどの日本の大学には,飛び級制度はありませんので,「大学4年」->「大学院修士2年」->「大学院博士3年」というのが,最短の経路となります。あと,大学院の場合は,卒業とは言わずに,「修了」と言います。

 

給料はもらえるの?修士課程偏

ともよく聞かれます。これに関しては,研究の分野によって異なるのではないでしょうか。わたしが知っている限り,かつ,私が研究している分野(心理学)に関しては,修士課程に在籍して,研究しているだけでは,給料はもらえません。そのため,生活するためには,アルバイトや奨学金を借りることは,ある程度必須なように思います。大学にあるめずらしいアルバイトには,ティーチング・アシスタントといって,授業の補助をするアルバイトや,実験参加(基本的には,安全な実験しか募集できません)のアルバイトもあります。

しかし,研究に関わることに関しては,大学や先生の研究費から出してもらえることもあります(全額ってわけではありません)。例えば,研究発表のために,国内や海外に行く場合の旅費や,実験に使う機械などは,お金のない学生には厳しいので補助してもらえる場合がありますが,大学や先生の方針次第です。

リーディング大学院といった,大学院に在学中に給料をもらえる制度(その分,忙しい?)や,給付型の奨学金,財団などの支援などもありますが,人数が決まっているので,多くの方がもらえるとは,限りません。

 

博士課程偏

博士課程以上では,給料をもらえる機会は,増えてきます。代表的なものに,学振DCというものがあります。これは,ざっくり言うと,博士課程の学生を国が特別研究員として雇ってくれるというものです。雇われているので,給料と研究費がもらえます。

詳しくは,こちらのホームページに。https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_gaiyo.html

月20万円の給料(研究奨励金)と年間150万円以内の研究費がもらえます。博士課程3年間もらえるDC1と,博士課程2年間もらえるDC2があります。博士課程に進学を考えている人や,研究者になろうとしている人は,ほとんどみんな申請する「競争的資金」です。競争的資金は,審査があり,すべての人が採用されない資金のことです。DC1とDC2ともに,採用率は,20%です。そして,DC1は,修士課程の2年生の5~6月に申請書を提出しなくてはいけません。

審査には,やる予定の研究がどれだけすばらしいかだけでなく,どれだけ研究の業績(認められる論文を書いたか,研究発表をしたか)を出しているかが見られます。修士課程の間は,お金がないのですが,研究に専念して,博士課程で研究を続けられるように,論文を書いたり,発表をしたり,しないといけません。それだけでなく,修士は英語で,マスターと言いますが,その分野のマスターになるために,勉強もしないといけません。私は,「発達心理学・発達科学マスター」にならないといけません。さとしが,ポケモンマスターを目指したようにです。

 

最後に

自分の研究を進めるために,DC1に採用されるための業績を作るために,日々を過ごしているうちに,もうすぐ1年が経とうとしています。仕事量ともらえるお金が,割に合わないのに,どうして研究をしたいの?とよく聞かれます。子どもが幸せになるためだったら,現場で働けばいいじゃんと言われます。私は,先生や保育士,親など,日々子どもと向き合っている方々を尊敬しています。私は,その援護射撃がしたいと思っています。

子どもが幸せになるためには,子どもにだけ何かをするのではなく,その周りも含めて幸せになることを考えなくてはいけません。子どもが意識している世界を知ってもらい,どうやったら子どもの気持ちやこころをわかってあげられるかを考える材料を提供したい。現場の方々と一緒に,子どもが生きやすい世界にしていきたいと思っています。そのためには,少しずつ子どもを知るための研究を続けていきます。そして,研究でわかったことを発信していきます。

どうして著者(わたし)は大学院に進学したの?

お正月が終わり,仕事や学校が始まりましたね。地元は山に面する田舎なので,野生のニホンザルが道路を渡ったり,裏の畑に集まったりしています。面白いのが,地元にいると,ニホンザル(マカク)は,嫌われる対象で敵なのですが,大学にいると,彼らは,研究仲間になるのです。ほとんどの脳の研究は,マカクなどが実験の参加者になっています。脳の構造,特に視覚系(ものを見る)は,人間とマカクでは,ほとんど同じなのです。私たちは,脳の研究が出た時には,どの種が研究参加者になっているかを確認します。他には,ラット(大きいネズミ)や,マウス(小さいネズミ)などの研究も多いです。

 

本当は,人間の脳を知りたいわけですが,研究のために人間の脳にメスを入れたり,電極を刺したりすることはできません。人間の脳を研究する場合は,非侵襲的方法と言って,脳には手を入れない方法,脳に害がない方法を使います。詳しくは,説明しませんが,脳波や脳の血流の変化を計測する方法があります。何か特定のことをしている時に,どんな脳波が見られるかや脳のどの部分が活動しているかを調べます。例えば,足し算などの計算問題を解いてもらっている時の脳活動や,映画を見ている時の脳活動を計測するなどがあります。今のところ,脳活動を見ただけで,何を考えているかなどはわかりません。

 

さて,今までのブログでだいたい,基本的な発達心理学の知見を書いてきました。まだ書いていない内容としては,言語発達や道徳性の発達,脳の発達,知覚の発達などでしょうか。少しずつ書いていきたいと思います。今回は,地元に帰ってきて思ったこと,思い出したことを今の研究に絡めて書こうと思います。

 

やはり,大学院生は,なぞの職種のようです。私の同級生は,基本的に数年働いている人が多いので,給料がもらえない学生でいるのは私だけです。そして,あと最低5年かかるというと,驚かれます。30歳になってしまいますからね。しかし,このようなことは,大学にいるとあんまり考えません。結婚や出産も増えてきました。どうにか,私が日々勉強していることが少しでも,役に立たないかなあと思って,ブログを書き始めた部分もあります。地元で働くことはありませんが,地元の子どもたち,パパママへの支援をしていきたいです。

 

私は,大学院で研究を続けることを,大学に入る前から考えていました。以前にも書きましたが,私は,子どものころから,生きている意味を見いだせないことで悩んでいました。どうせ死ぬのですから,何をやっても意味がないわけです。家族を含め,他人とは分かり合うことはできませんし,できるだけ関わりたくありませんでした。そのため,自分(人間)は孤独であることから出発して生きることを考える必要がありました。表向きは,部活や勉強をがんばっている感,友だちや恋人と仲良くしている感を出している優等生だったわけです。

 

そんな中で,哲学や心理学の本は,一つの生きる希望となりました。ただもがくだけでなく,もがくヒントをくれるような感じです。そして,悩んでいるのは私だけではないことがわかりました。時空間を超えて,仲間がいたことに気づくような感じです。なるほど,デカルトは「われ思うゆえに,われあり」と言ったわけだ。感覚や身体は,信じられないんだな。確かにそうだな。あとはあとは?ぬぬ,ニーチェニヒリズムは,ネガティブとは何か違うな気がする。ふむふむ。などなど,「そんなこと考えてもしょうがないよ。」という,周りの人たちよりも,本の中の人たちは,私と会話をしてくれました。

 

心理学の本は,人間がどうやって生きているかを教えてくれました。フロイトの無意識は,私にとっては革命的なものでしたし,エリクソンアイデンティティは,まさに今の自分を説明していることにびっくりしました。なるほど,私のこのコンプレックスや劣等感だったり,あの人の行動は,こういう理由があったのか,なんか心が楽になるかもしれないと思いました。あとは,大学で,ラマ・チャンドランの「幻肢痛」(事故などで失った体の一部が痛むという現象)やマイケル・ガザニガの「半側空間無視」(視界の半分が見えなく,かつそのことに本人が気づかない現象)を読んで,人間の不思議さに魅了されました。意識と無意識に興味を持ちはじめました。

 

こういった,生きている意味や生きている世界のおもしろさを考えることが,わたしにとっての生きるモチベーションだったのです。これらを考え続けられる生き方をしたいと思っていましたので,哲学や心理学を勉強できる大学を選び,そのまま大学院に進学しました。私の研究のテーマも必然的に「意識」となったわけです。そして,こういった研究の知見は,生きる希望になると身を持って知っています。子ども時代の怖くて寝れなかった夜が,少しは減るかもしれません。考えてしまう自分を受け入れるのに,多くの時間がかかりました。

 

お笑い芸人は,笑いを提供するわけですが,私も,生きていることのおもしろさを提供したいと思っています。研究をしていると,その研究の社会的な意義(社会の役に立つのか?)と学術的な意義(他の研究の役に立つのか?)を考える必要があります。とても大切なことです。しかし,それに加えて,科学の進歩は話のネタになりますし,おもしろいです。「人間とはなにか」「わたしとはなにか」は,自分を知りたいという欲求を表しています。「なぜ生きているのか?」も同様です。生きようと思える。生きたいと思えるかもしれない。そしてここに,人文科学の可能性と必要性があると思います。私のなかでは,家族や友人などの人間関係ではなく,哲学や心理学などから自分で考えることによって救われたという感じがあります。

 

ただ,私には,難しいことがあります。私は子どもの「いまここにあるわたし」を研究しているわけですが,私自身は,「」を感じることはできるのですが,楽しむことができないのです。「楽しい」という感覚がよくわかりません。だからこそ,子どもたちの楽しそうな様子に引き付けられるのかもしれません。私は,気楽に生きることができないことを確信しました。だからどうせなら,とことん気苦労に,「生きること」に向き合おうと決めました。「生きている(世界)」ことを「意識」する主体としての「わたし」の発生と発達を考えています。

 

今回は,まとまりのない私の大学院に進学した経緯を書きました。私にとって,研究し続けること,生きることを考え続けることは,生きるモチベーションなのです。これがなかったら,たぶん,生き続けてこれなかったと思います。これは,寂しい人生なのでしょうか?よくわかりません。

 

おすすめの本は,

『人間らしさとはなにか?ー人間のユニークさを明かす科学の最前線』マイケル・S・ガザニガ

-> 文庫本になっていましたね。『人間とはなにか』

『脳のなかの天使』V・S・ラマチャンドラン

です。べらぼーにおもしろいです。分厚さに注意ですね。

まだ,生きていたいと思えた本です。