院試で問われているもの

 今日は,朝早起き (寝れなかった) して自転車に乗っていたのですが,朝はけっこう涼しいんですね。最近は,昼頃から活動していたのですが,朝から活動するようにしようと思います。今日は,生活リズムを調整するために,寝ずにこのまま活動を続けようと思います。

 ここ最近は,子ども向けのオンライン視覚実験の課題作成を行っています。プログラミングが得意なわけではなく,かつ,最近使い始めたソフトなので,なかなかうまくいかなくてしょんぼりする日々ですが,少しずつ改善している気がします。周りの人に急かされつつ,自分のペースでやっていこうと思います。

 今回は,【院試で問われているもの】に関して書きます。

 

【院試で問われているもの】

 私が知る限り,院試の問題は,①語彙説明,②内容要約,③ケーススタディ,④研究計画,⑤統計,⑥英語,で構成されているのではないでしょうか。どうして,このような問題構成になっているのでしょうか。大学院入試は,受験者が大学院での研究活動を行う上で最低限の知識や技能を身に着けているかを試すものです。つまり,大学院での研究や臨床実習に必要な能力を見ています。しかし,4年生は,研究活動として,卒業研究・論文を書いていますよね。卒論を書いている方なら,上記の院試の問題構成の意味に気づくでしょうか。そうです。すべて,卒論や修論を書くために必要な技能です。

 研究計画を立てずに,いきなり研究を始めることはできません。研究は,テーマが決まったら,そのテーマの先行研究を知らべます。最近では国内の研究でも,査読付きの英語論文が研究の中心になっています。先行研究を調べるためには,いくつも英語 (⑥) の論文を読まなくてはいけません。さらに,心理学の研究は,統計的分析によって仮説を検討するものがほとんどです。研究の結果は,統計 (⑤) の知識がないと理解することができません。やっかいなことに,研究の目的やデータの種類によって,分析方法は変わってきます。

 さて,先行研究も集まってきました。これで,そのテーマに関して,どこまでわかっていて,何がわかっていないかが見えてきたと思います。ここからが,あなたのオリジナルです。独自の着眼点から,もし○○ならば,△△だろう!という仮説を立てました。どうやって,その仮説を検討しますか?ここで,研究計画 (④) を考えます。独立変数や従属変数は何か?実験群と統制群をどうするか?参加者内なのか参加者間なのか?どのような分析を行うか?などなど,洗練された研究を行うためには,洗練された研究計画を考えることが必要です。ここでも統計の知識が生きてきますね。

 では,卒論のイントロを書きましょうか。広めな話から研究のテーマに入っていきます。そのテーマの専門用語や論文の中で使う専門用語を定義する必要がありますよね。ここで,語彙説明 (①) の技能が必要になります。過不足なく,その用語の定義を書く。そして,その語の重要度や位置づけによっては,さらに細かく書く必要があるかもしれません。そして,先行研究のレヴューを書きます。さて,どうやって書くか?先行研究の重要度によって,一文でいいのか,方法や結果の詳細まで書くかが決まります。ここで,内容要約 (②) の技能が必要になります。卒論を英語で書いている人は,英語の技能も必要ですね。ちなみに,京大の発達は,修論を英語で書きます。

 さて,方法書いて,実験します (ザーッと省略)。さて,データを分析しましょう。分析方法を決めていたからといって,簡単にできるとは限りません。パソコンが出した数字の集まりのどこが意味のある (必要な) 数字でしょうか?なんか,数字がおかしいかもしれない。どこかでミスっちまったかもしれない。やべえ,どこで間違えた?こういうときに,統計 (⑤) の知識が必要でしょう。まあ,ちょっと強引かもしれないけど。

 その後,無事に結果と考察を書きました。最後に,要約を書きます。最近は,要約を英語で書く大学も増えてきていますね。内容要約 (②) と英語 (⑥) の合わせ技です。

 ケーススタディ (③) は,臨床心理系で良く出るかもしれません。実習や現場に出た際に,ある状況において,その状況の理解と介入方法をその場で考えることためのものでしょう。

 上記のように,院試の問題は,研究活動と繋がっています。答え方がわからない,模範解答がわからない。そんなときは,卒論に使っている先行研究を読み込んでみるのが良いのではないでしょうか。あるいは,重要だと思われる論文。専門用語の定義の書き方,研究計画の立て方,目的・仮説と統計的分析の関係などなど。院試が重要で大変なのはわかります。ですがやっぱり,院試は,研究を続けるための中間テストのようなものです。院試の勉強を利用して,研究の技術や専門知識を身に着けると思ってぜひがんばってください。今,頭を抱えながらやっている受験勉強には,ちゃんと意味がありますし,未来につながります。研究計画を考えることも同様です。次回は,研究計画に関して書こうと思います。どうか,暑さや世間や受験に負けないように。

 

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大学院・研究室選び

 暑いですね。一人暮らしの学生は,大丈夫でしょうか。電気代の節約のために,図書館やバイト先が,涼みポイントだったと思いますが,今年はどのようにお過ごしでしょうか。熱中症にお気をつけくださいね。今回は,以下について書こうと思います。

 

【大学院・研究室選び】

 私が大学院・研究室選びで重要視したのは,①指導教員の研究テーマ,②研究室でできること,③指導教員の指導方針,④研究室や研究科の大学院生,でした。これらのことは,研究室訪問の際に必ず確認した方が良いです。指導教員や研究室が自分に合うかどうかをこちらから試す気持ちで良いと思います。

①指導教員の研究テーマ

 私は,認知心理学発達心理学の分野の研究をしたいと思っていたので,全国の大学院で研究室を持っている当該学問の研究者を調べました。方法としては,i) 本の著者から手繰る。ii) 各大学のホームページから手繰る,iii) リサーチマップから手繰る,ことをしました。

 i) 本の著者から手繰るに関しては,入門書や専門書は,テーマごとに複数の先生が本を書いていますので,おもしろいなと思った章を担当した先生のホームページや出している本や論文のタイトルを調べました。発達心理学に関しては,清水・林 (編)『他者とかかわる心の発達心理学』がおすすめです。12人の発達心理学の講師や研究員,准教授の研究をバリバリやっている (であろう) 先生方が自分の研究について書いています。この本は,研究計画を考える際にも役立ちます。認知心理学に関しては,日本認知心理学会 (編)『認知心理学ハンドブック』を読みながら,先生や研究室を調べました。

 ii) 各大学のホームページから手繰りに関しては,発達心理学認知心理学は,研究科の名前ではあんまり見つからないですが,だいたい,教育学研究科や文学研究科にあります。その時ついでに,メンバーなどを見て,大学院生や研究室の構成員を見ました。

 iii) リサーチマップは,ほとんどの研究者が登録してあるので,名前を検索すると出てきます。現在の所属先や著作物,共著者の一覧がわかるので便利です。

 そのうえで,私は,卒論のテーマだった,子どものうそ・欺き研究に関係している,「心の理論」,「道徳性」,「欺き」,「実行機能」などの研究テーマに関わる先生に絞りました。

②研究室でできること

 私は,実験的方法で,行動指標に加えて,神経指標も計測したいと考えていたので,その先生がそういう研究をしているかどうかを調べました。例えば,NIRSやEEGを研究に取り入れたいと思っていても,その研究室にその器具がなければできません。逆に,先生や研究室の院生や研究者がその器具の操作方法に詳しいなら,いろいろと教えてもらえるかもしれません。

③指導教員の指導方針

 研究生活をしていくなかで,指導教員の方針は重要です。放任主義の研究室もあれば,トップダウンで,先生の研究を手伝うことが当たり前の研究室もあります。私が重要だと思ったのは,i) 先生や大学院生が第一著者で定期的に論文を出しているか,ii) 院生が自由に研究をできるか,です。

 i) 先生や大学院生が論文出してるかに関しては,指導教員自身が,研究することを続けていること,大学院生への指導をしていることを示します。特に,国際紙に英語でしっかりと論文を出していることがポイントでした。私は,のんびりな先生や研究室よりも,ガンガン研究して,論文を書いていく,スタイルが好きです。

 ii) 院生の自由に関しては,院生の研究の主軸が院生であって,指導教員がそのサポートをしてくれるかです。指導教員が研究のテーマとは違う場合に,そのテーマに詳しい先生を紹介してくれたり,研究会を紹介してくれるなど,研究のチャンスを広げるサポートをしてくれる先生もいます。その逆に,院生は,研究室の研究テーマの一部を担い,研究は,研究室内で完結させて,外部とのコミュニケーションを許してくれない先生もいます。研究室を離れることになっても,研究を応援してくれる先生が理想ですね。

④研究室や研究科の大学院生

 同期の存在は大切だと思います。同じ研究室の院生だけでなく,研究科の別の研究室にも院生がいて,少し違う視点から研究の話ができることは,研究生活をするモチベーションになります。先生や研究室の愚痴を聞いてくれる貴重な研究仲間でしょう。こういう点から,比較的大学院生が多い,研究大学は良いと思います。そして,将来のキャリアを考えると人脈は大事です。優秀な同期や研究仲間がいると刺激にもなります。

 

 とりあえず,以上にします。こういった情報は,必ず研究室訪問で,先生に直接聞いたり,大学院生に聞いたりしましょう。特に,大学院生がどういう生活をしているか,大学院生から見た先生はどうかなどは大切です。ここに決めた!と思っているとき,この先生はすごい!どんなことがあっても自分は大丈夫だ!と思ってしまうものです。しかし,大学院に入ってから,先生と合わなくて,研究が嫌になったり,大学院をやめてしまったりすることも少なくありません。指導教員と研究室を選ぶのは,学生側ですので,あまり先生を神格化せずに,大学院や研究室を選びましょう。

 

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大学院進学への道

 世間はお盆休みなので,研究を少し中断して,大学院入試を受けるまでを振り返ろうと思います。心理系大学院,特に発達心理学に関して,院試を受けようと思っている方の参考になりましたら幸いです。

 コロナ禍,猛暑の中,周りが夏休みで遊んでいる中,院試の勉強をしている方々,不安な方もいるかもしれませんね。どうか心身ともに無理のないように,がんばってください。応援しています。

 

私は,

京都大学大学院 教育学研究科 発達科学コース 

神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 人間発達専攻 心理系

の2研究科を受験し,合格し,①京大の発達に進学しました。

 

大学は,

横浜市立大学 国際総合科学部 国際総合科学科 国際教養学系

でした。理学系で入学して,2年時から国際教養学系に転学系・進級しました。

発達心理学ゼミに所属し,卒業論文も発達研究で書きました。

子どもの嘘の発達に関する研究を行いました。

心理学入門,心理学,発達心理学教育心理学,臨床心理学,精神分析,集団心理療法,心理学実験法,社会心理学,など開講されている心理学の授業 (半期) すべて受講し,18単位取りました。

 

その他,

大学受験のために予備校の理系クラスで,1年浪人をしました。

学部時に,フランスの大学の哲学部に1年交換留学をしました。

ストレートで研究を続けている同い年の方からは,2年遅れています。

 

発達心理学での大学院進学の決断について】

 大学院進学は,大学入学前の浪人時から決めていました。当時は,哲学か心理学のどちらかで行きたいぐらいの曖昧な感じでした。ゼミ選びの際に,実験や数学を使って実証的に研究できる心理学をやろうと思い,それができそうだったのが,発達心理学のゼミだけだったので,そこに入りました。子どもも好きだったので。だから,最初に関わることになった心理学は,発達心理学です。卒業研究をしている際に,もっと子どもや発達に関する勉強と研究を続けたいと思いました。そして,そのまま発達心理学で大学院に進学することにしました。指導教員から,心理学の大学院生の指導の制度が整備されていないから,外部の大学院に行くように促されました。

 

【院試の勉強に関して】

 私のゼミには,2,3年に1人くらい,外部の大学院に進学する方がいましたので,指導教員もサポートしてくれました。具体的には,研究計画書を見てもらいました。それ以外に,大学には,①精神分析,②臨床心理学,③発達心理学のゼミがあったので,そこの学生で大学院進学を考えている学生に声をかけて,情報交換会や勉強会を行いました。そこでは,ヒルガードや心理統計を輪読,卒論や修論の読み合い,院試の対策を行いました。研究大学ではない,大学院生もいない,心理学の授業もほとんどない,という中で,勉強を続けるためにモチベーションを保つためには,サポートし合う仲間が必要だと思いました。私の代が4人,次の代が1人,全員志望校に合格し,現在大学院生をしています。私以外は,みなさん,臨床心理系です。

 

 具体的な院試の勉強法やおすすめの文献などを次回から,書いていこうと思います。

需要があるかはわかりませんが,誰かの生きるモチベーションになれば幸いです。

ブログのコメントやツイッターのメッセージ,質問箱的なものに,質問やコメントをいただけたら,できる限り答えたいと思います。

 

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大学院生になってからどんな本を読んだの?

こんな時だからこそ前向きに本を読みましょう編のおまけです。私が大学院に入学してから読んだおすすめ本10冊です。意識シリーズですね。好みが偏っているので,恥ずかしいですが。論文と違って,一般向けの本は,著者の主観や人生観?が入っていておもしろいです。論文読んでて行き詰ったら,その人の本を読むこともよくあります。

 

大学院で読んだ本です。

 

『意識はいつ生まれるのか―脳の謎に挑む統合情報理論』トノーニ・マッスィミーニ

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『意識をめぐる冒険』クリストフ・コッホ

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『自己心にやってくる』ダマシオbookmeter.com

 

『タコの心身問題―頭足類から考える意識の起源』ピーター・ゴドフリー=スミス

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『〈わたし〉はどこにあるのか:ガザニガ脳科学講義』ガザニガ

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『脳の意識機械の意識―脳神経科学の挑戦』渡辺正
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『意識と脳ー思考はいかにコード化されるか』ドゥアンヌ

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『生存する意識―植物状態の患者と対話する』エイドリアン・オーウェン

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『意識とはなにか』茂木健一郎

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『「意識」とは何だろうか―脳の来歴,近くの錯誤』下條信輔

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つい,「意識」と書いてある本を手に取ってしまい,図書館でなら良いのですが,本屋さんでの場合は,気づいたら買ってしまいます。そして,食費を抑えよう!と決意します。やっぱり読んだらおもしろい。SNSや動画,ネット記事で,いかに短時間で効率よく,わかった(気にさせるか)の時代ですが,自分のペースでわかったを確認しながら,対話できる本もおすすめです。そして,わからないまま進めていく感覚と,突然どこかでわかったになる感覚は,世界と自分が変わる瞬間を感じることができます。

 

大学生の時にどんな本を読んだの?⑤

さて,最後の10冊です。卒論を出してから大学院に入る前に読んでいた本ですね。

 

卒論出してから読んでいた本です。

 

『哲学する赤ちゃん』アリソン・ゴプニック

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『ヒトはなぜ神を信じるのか―信仰する本能』ジェシーベリング

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『おさなごころを科学する』森口佑介

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『社会脳の発達』千住淳

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人工知能に哲学を教えたら』岡本裕一朗

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『道徳性の起源:ボノボが教えてくれること』ドゥ・ヴァ―ル

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『子育ての知恵:幼児のための心理学』高橋恵子

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『進化発達心理学―ヒトの本性の起源』ビョークランド・ペレグリーニ

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『子どもの難問』野矢茂樹(編)

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私が最も好きな本です。

 

『星の王子様』サン=テグジュペリ 河野万里子訳

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おもしろそうだなと思った本がありましたら,読んでみてください。

おもしろい本は生きるエネルギーを与えてくれます。こんな世の中だからこそ,心に平和が必要でしょう。本を読んだ後には,見える世界が変わりますし,自分も変わります。生きることは,学ぶことです。学ぶことは,変わることです。これが読書の醍醐味でしょうね。

 

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 大学院生になってからどんな本を読んだの?

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大学生の時にどんな本を読んだの?④

さて,今回の10冊です。フランスから日本に戻ってきてからは,子どもの道徳性の発達を調べていたので,それに関連した本を読んでいました。さらに,療育施設で働いていたので,発達障害に関しても勉強していました。子どもに関しての本を読むことが多くなったり,大学院入試のための勉強を始めたころですかね。

 

日本に戻ってきてからの本です。

 

『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』モンズースー

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『子どもの釈迦的な心の発達:コミュニケーションのめばえと深まり』林創

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『最新図解自閉症スペクトラムの子どもたちをサポートする本』榊原洋一

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『なぜと問うのはなぜだろう』吉田夏彦

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ダンゴムシに心はあるのか新しい心の科学』森山徹

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『子どものうそ,大人の皮肉―ことばのオモテとウラがわかるには』松井智子

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『ジャスト・ベイビー:赤ちゃんが教えてくれる善悪の起源』ポール・ブルーム

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『子どもはなぜ嘘をつくのか』ポール・エクマン

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『哲学入門』戸田山和久

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『子どもは善悪をどのように理解するのか:道徳性発達の探求』長谷川真里

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今回の10冊は以上です。ペース配分を考えていなかったので,次の10冊で収まらないかもしれませんね汗

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?⑤

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大学生の時にどんな本を読んだの?③

いっきに書いちゃおうと思います。フランス留学中に,読書をする習慣が身についたように思います。交換留学で,リヨン第三大学哲学部に1年在籍しました。「自由」と「意識」をフランスで考えたいと思ったからです。特に,サルトルフーコーにはまっていました。しかし,フランス語で授業や本を理解するのが難しかったので,日本語で手に入るものをできる限り集めました。そんなとき,海外にいながら日本語の本を読むことができる電子書籍キンドルがとても便利でした。さて,今回の10冊です。

 

フランス留学中に読んだ本です。

 

『そうだったのか現代思想ニーチェからフーコーまで』小阪修平

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『予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』アリエリー

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『入門!論理学』野矢茂樹

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『ご冗談でしょう,ファインマンさん上下』リチャードファインマン

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『人生論ノート』三木清

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『サブリミナル・マインド―潜在的人間観のゆくえ』下条信輔

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『平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学』スコットペック

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『DNAから見た日本人』斎藤成也

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『あなたの知らない脳―意識は傍観者である』デイヴィット イーグルマン

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『つながる脳科学「心のしくみ」に迫る脳研究の最前線』

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そういえば,「日本人」のルーツは?という質問をドイツ人からされたんでした。あれは,友だちの部屋でパーティーをしている時だったっけな。

 

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?④

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大学生の時にどんな本を読んだの?②

さて,10冊ごとにわけて紹介しようと思います。今の私は,出会ってきた人々から影響されたというよりも,読んできた本に影響されています。専門的過ぎる本や,シリーズ本は,抜いています。

本を選んでいて思うのですが,なんか読んでいた時の思い出がよみがえりますね。ああ,これは図書館で読んだなとか,大学の池の横で読んだなとか,カメリアのベンチで読んだなとか。ワクワクだったり,孤独を感じていたり。ああ,自分はなんて無意味な人間なんだろう。少しでも前に進まないと。

 

大学時代に読んだ本です。

 

『脳の中の天使』ラマチャンドラン

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『人間らしさとはなにか?—人間のユニークさを明かす科学の最前線』ガザニガ

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『ファスト&スロー上下』カーネマン

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『データを正しく見るための数学的思考』ジョーダン・エレンバーグ

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『錯覚の科学』チャブリズ・シモンズ

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『他者とかかわる心の発達心理学:子どもの社会性はどのように育つか』清水・林(編)

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『学びとは何かー〈探求人〉になるために』今井むつみ

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フランス留学中に読んだ本です。

 

『フランス現代思想史ー構造主義からデリダ以降へ』岡本裕一郎

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『いま世界の哲学者が考えていること』岡本裕一郎

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存在と無サルトル

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今回の10冊は,少しマニアックかもしれませんが,興味のある人にはおすすめです。

フランス留学中には,キンドルを使って本を読んでいました。

がんばって,フランス語で「存在と無」を読む!と意地になっていたのを思い出しました。自由ってなんだろう。意識ってなんだろう。そんなことを考えながら,大学の図書館や,町の図書館,公園のベンチ,ガロア遺跡で。

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?③

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大学生の時にどんな本を読んだの?①

ことごとくイベントが中止になっていますね。私も研究会や学会などが中止に,発表の予定もなくなりました。今後,国内での研究イベントがなくなるのは,しょうがないですが,海外での研究イベントがなくなると,業績を考えると苦しいですね。6月にイスラエルで開催される学会で発表予定ですが,どうなることやらです。

 

今回は,大学時代に読んでおもしろかった本を紹介しようと思います。少ないですが,200冊ほど本を読むことができたので,そのなかから50冊ほど選びます。今年読んだ本からも出しますね。1年浪人して,1年留年したので,6年でこれしか読めなかったのか!と怒られそうですが,私なりに学問をしようと思い立ってからがんばって本を読む習慣を作りました。最近はあまり本を読めていないので,本を読む時間を作ろうと思います。読書メーターというアプリで読んだ本を管理しています。一般向けの本を選んでいます。

 

浪人時代に読んだ本です。

私は,実は「道しるばー」でした。

わかる人にはわかるでしょうか?

 

『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』ジャレド・ダイアモンド

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『知の逆転』ジャレド・ダイアモンド

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『東大入試問題に隠されたメッセージを読み解く』大島保彦

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大学で読んだ本です。

 

『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗り越えるための発達心理学』渡辺弥生

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『天才が語るサヴァンアスペルガー共感覚の世界』ダニエル・タメット

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アルジャーノンに花束を』ダニエルキイス

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数学ガール/ゲーデル不完全性定理結城浩

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『人はなぜ恋に落ちるのか?—恋と愛情と性欲の脳科学』ヘレンフィッシャー

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『飛びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること』東田直樹

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『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』前野隆司

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とりあえず,10冊です。本屋さんや図書館を歩いている感じで見てください。

何か目に留まる本があるとうれしいです。

 

 大学生の時にどんな本を読んだの?②

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道徳的感情ってなに?共感ってなに?

3月に入りましたね。2週に1記事というペースになってきました。このぐらいがちょうど良いのでしょうか。ブログに書いている内容と,普段勉強している内容と,研究している内容が,少しずつ違っていますので,頭の切り替えには良いのかなあと思います。

 

実は,私の家には,机と椅子がなかったのですが,ちょっとこの度,アマゾンで買ってみました!普段は,寝るときぐらいしか家にいないのですが,家で落ち着いて,勉強したり,本を読んだりしようと思います。本当は,よく引っ越しをするので,家具を買わないようにしていたのですが,生きている時間は有限なので,ほしいものは買おうと決めました。最近は,積極的に休むようにしようと思ってはいるものの,なんか家にいるときの「ぼけー」は,質が悪いというか,疲れるんですよね。引っ越すときのめんどうは,未来の自分に託します。うーん,でも近いうちにまた留学したいし,大学院修了したら,確実に今の場所を離れることになるので,めんどくさいなあ。ちなみに,今の場所は,もうすぐ一年になります。さらにちなみにもうすでに,少しでっかい懸垂用のぶら下がり器が部屋にありますが,こいつは,引っ越す際にお別れするでしょう。

 

さて,前置きがありましたが,今回は,道徳的感情について書きます。ルイスは,感情を「一次的感情」と「二次的感情」に分けて,発達的にどのように獲得していくかをまとめています。さて,映画『インサイド・ヘッド』をご覧になったことはあるでしょうか?以前,別の記事でも紹介しましたが,この映画には,神経科学者が関わっているので,科学的な知見にそってストーリーが進んでいきます。主人公ライリーの頭の中で,感情たちが生き生きとやり取りをしていますね。「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」でした。そして,「ビンボン」は,空想の友達として出てきましたね(復習です)。

https://www.learnerchilddevelopment.work/entry/2020/01/02/021337

 

「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ビビり」「ムカムカ」の5人(?)は,基本的な感情としてライリーが赤ちゃんの時からいましたね。これと同様に,ルイスによると,「一次的感情」として,「喜び」「驚き」「悲しみ」「嫌悪」「怒り」「恐れ」があり,これらは,生後半年までに現れるとされています。「驚き」「恐れ」は「ビビり」に,「嫌悪」は「ムカムカ」に対応しますでしょうか。

 

その後,ルールの理解し,自分の行動を評価できる(良いことをした,悪いことをした),見られている自己の発達などによって,1歳後半~2歳ごろに,「てれ」「羨望」「共感」など,2歳半~3歳ごろに,「当惑」「誇り」「恥」「罪悪感」が出現するとされています。「誇り」「恥」「罪悪感」の感情は,「自己評価的感情」とも呼ばれますし,「道徳的感情」です。

 

道徳的感情として,「恥」と「罪悪感」について考えてみましょう。

「恥」は,自分の身体的特徴や能力などを否定的に評価し,かつ他者が自己を否定的に評価していると考えるときに生じる感情です。例えば,転んでしまったときに,私は,「ドジで運動神経がないなあ」と評価して,それを誰かに見られたときに,「ドジで運動神経がないやつだな」と評価されていると考えるというものです。恥が生じた際は,他者を避ける行動をとりやすいとされています。

 

「罪悪感」は,自分の行為を否定的に評価し,その行為が他者にどのように影響するのかを考えるときに生じる感情です。例えば,上の転んだ例だと,転んだところを見せてしまって,「きっと困惑させてしまっただろうなあ」と考えるというものです。罪悪感は,他者への影響に関係するので,謝るなどの行動がとられます。

 

私は,目の前で人が転ぶんだとき,「助けた方が良いよなあ。でも,転んだところを見られて恥ずかしいかもなあ,放っておいてほしいかなあ,すぐにこの場を離れたいから,声かけられたくないかなあ。。。」と困惑します。もちろん,おもいっきり転んだらすぐに声を掛けますが,おっとっと程度だったら,悩みます。そして,そのあとに,どうしてすぐに助けなかったのかを思い,「罪悪感」を感じて反省しています。

 

最後に,獲得の順番は逆であるが,「共感」について考えましょう。「共感」は,道徳性・感情の基盤です。教育関係者の方とお話をすると,ほとんどの方は,「共感」は良いものであると思っています。しかし,少し注意が必要です(興味がある方は,ポール・ブルームの『反共感論ー社会はいかに判断を誤るか』を読んでください)。共感には,2つあります。「情動的共感」「認知的共感」です。

 

1つ目の「情動的共感」は,他者の感情を共有し,その人の行動状態に合わせることです。赤ちゃんでは,「情動伝染」が起きます。これは,他の赤ちゃんが泣いていると,一緒に泣いてしまう現象です。自他分離(自分と他の人の区別)の未熟な赤ちゃんは,悲しみ(?)が伝染してしまうのです。また,赤ちゃんもそうですが,他の動物にも見られます。一番基礎になる共感でしょう。

 

2つ目の「認知的共感」は,他者の感情について考え理解する能力です。これには,「視点取得(他者の視点に立てる)」や「心の理論(他者の考えていることを予測する)」ことも関係していますし,同義として使うこともあります。頭で考えて,「きっと,○○君は,こう感じているな」というものです。情動的共感から遅れて獲得します。

 

共感性尺度としては,デイヴィスの「対人的反応性指標」があります。尺度というのは,簡単に言うと質問事項やアンケートのようなものです。質問に回答してもらい,それぞれの得点を出して,その関係を考えます。デイヴィスの尺度では,①共感的関心,②視点取得,③個人的苦痛,④ファンタジー,4つの次元(質問のまとまり)があります。

 

①「共感的関心」は,他者への同情や思いやりの持ちやすさを測ります。

②「視点取得」は,他者の視点に立つようにしているかを測ります。

③「個人的苦痛」は,他者の苦しみに対して不快に感じやすいかを測ります。

④「ファンタジー」は,その世界に自分を当てはめる傾向を測ります。

 

「情動的共感」と「認知的共感」は,共感の分類や定義です。共感ってなに?ということです。それに対して,共感性尺度は,その人が,その集団が,どのくらいそれぞれの項目に当てはまるか?ということです。同じ「共感」の説明ですが,違う側面を表していることに注意です。

 

今回は,ここまでします。

 

参考文献・おすすめの本は,

『子どもは善悪をどのように理解するのか?』長谷川真里 ちとせプレス

『孤独と共感』日経サイエンス編集部 日経サイエンス

『反共感論』ポール・ブルーム 白揚社

『共感』 梅田聡(編) コミュニケーションの認知科学2 岩波書籍

です。読みやすさ順です。